技術資料 気体編 8.面積流量計の型式口径選定方法

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気体用 面積流量計の型式口径選定方法(流量の換算)

1.仕様温度、仕様圧力、最大流量が決まっている場合(体積流量-ノルマル流量表示)

カタログの流量表には「口径-AIR流量」が記載されていますが、このAIR流量は操業状態 20℃、1atmの想定で、流量単位は m3/h(ntp) 、L/min(ntp) などで記載されています。

流量単位の(ntp)は 0℃、1atmの基準状態で表していますので注意してください。

実際の仕様では気体種類、圧力、温度によって AIRの m3/h(ntp) 、L/min(ntp) 流量に「換算」をして、各種型式のカタログ流量表より型式、 口径を選定する必要があります。

カタログに「各種気体別」、「圧力別」、「温度別」の流量表を掲載するには膨大なページ数を必要としますので、代表的な「AIR」と20℃、1atmの仕様を例として掲載しております。

流量表が操業状態 20℃、1atm の想定で記載されていますが、実際の使用が 20℃、1atm で可能なわけではなく、型式により正常に流量計測が可能な1次圧力が必要になります。

     
この式の導きはこちら
Q(AIR) 1atm、20℃ 操業へのAIR換算流量 m3/h(ntp)、L/h(ntp)
客先仕様流量(流量計最大流量) m3/h(ntp)、L/h(ntp)
ρ 仕様流体の密度(ロー) kg/m3(ntp)
仕様流体の圧力 kPa(G)
仕様流体の温度

例1.N2ガス 密度1.25 kg/m3(ntp)、圧力500 kPa(G)、温度25℃で最大流量 600 m3/h(ntp)の気体用流量計の口径を選定します。
(圧力が MPa(G )の場合も kPa(G) に換算して数値代入してください。)
(1MPa(G)=1000kPa(G) 0.5MPa(G)=500kPa(G) )

手順1-1.AIR換算流量を求めます。
上式に数値を代入して

AIR換算流量 244.3 m3/h(ntp)が得られました。

√(平方根)が算出できる関数電卓をお持ちで無い場合はWindows のスタート→すべてのプログラム→アクセサリ→電卓より sqrt を用いて計算できます。

上記計算の EXCEL FILE はこちら 通常は左のEXCELL計算をご利用ください。

圧力単位の換算例

例1 5MPa(G) = 5 × 1000 = 5000 kPa(G)

例2 5MPa.abs = 5 - 0.10133 = 4.89867 MPa(G) = 4898.67 kPa(G)

例3 5 bar(G) = 5 × 100 = 500 kPa(G)

例4 5bar.abs = 5 - 1.0133 = 3.9867 bar(G) = 398.67 kPa(G)

手順1-2. 型式:EMGシリーズを選定すると仮定して下記流量表より最小流量~最大流量の範囲に計算した244.3m3/h(ntp)が該当する口径を選定します。

測定範囲(最大値) 50 ~ 350 の本体サイズ50Aが選定できます。
もしくは、本体サイズ 65A 80A 100A でも選定できます。

本体サイズ EMGシリーズ 測定流量範囲     流れ方向記号:1
>AIR m3/h(ntp) 圧力損失 kPa 質量
kg
標準目盛 測定範囲(最大値) 標準 最大
20A 3 ~ 30 9 ~ 50 4.0 7.5 6.0
25A 5 ~ 50 15 ~ 90 4.5 8.0 8.0
40A 10 ~ 100 30 ~ 200 5.0 8.0 10.0
50A 20 ~ 200 50 ~ 350 5.5 8.5 12.0
65A 30 ~ 300 60 ~ 450 6.0 8.0 15.0
80A 40 ~ 400 120 ~ 600 6.0 8.0 22.0
100A 60 ~ 600 200 ~ 1000 6.0 8.5 30.0

※流量単位がL/h(ntp)の場合も計算式は同じです。
※上記表は一例であり、口径に対する製作可能流量範囲は流量計型式により異なります。
  御使用になる流量計型式の最新版カタログ流量表をご覧ください。

2.仕様温度、仕様圧力、最大流量が決まっている場合(質量流量)

カタログの流量表には「口径-AIR流量」が記載されていますが、このAIR流量は操業状態20℃、1atmの想定で、流量単位はm3/h(ntp)で記載されています。

実際の仕様では気体種類、圧力、温度によってAIRのm3/h(ntp)流量に「換算」をしてカタログ流量表より口径を選定する必要があります。

客先仕様流量の単位が質量流量(kg/h)の場合は下記換算をします。

Q(AIR) 1atm 、20℃ 操業へのAIR換算流量 m3/h(ntp)
W 客先仕様流量(質量流量) kg/h
Q 仕様流体流量(体積流量) m3/h(ntp)
ρ 仕様流体の密度(ロー) kg/m3(ntp)
P 仕様流体の圧力 kPa(G)
T 仕様流体の温度

例2.N2ガス 密度1.25 kg/m3(ntp)、圧力500 kPa(G)、温度 25℃で最大流量 600 kg/hの気体用流量計の口径を選定します。
(圧力が MPa(G) の場合も kPa(G) に換算して数値代入してください。)
( 1MPa(G)=1000kPa(G) 0.5MPa(G)=500kPa(G) )

手順2-1.AIR換算流量を求めます。
上式に数値を代入して

AIR換算流量 195 m3/h(ntp)が得られました。

上記計算の EXCEL FILEはこちら

手順2-2.型式:EMGシリーズを選定すると仮定して下記流量表より最小流量~最大流量の範囲に計算した195m3/h(ntp)が該当する口径を選定します。

測定範囲(最大値) 30 ~ 200 の本体サイズ40Aが選定できます。
もしくは、本体サイズ 50A 65A 80A でも選定できます。

本体サイズ EMGシリーズ 測定流量範囲     流れ方向記号:1
AIR m3/h(ntp) 圧力損失 kPa 質量
kg
標準目盛 測定範囲(最大値) 標準 最大
20A 3 ~ 30 9 ~ 50 4.0 7.5 6.0
25A 5 ~ 50 15 ~ 90 4.5 8.0 8.0
40A 10 ~ 100 30 ~ 200 5.0 8.0 10.0
50A 20 ~ 200 50 ~ 350 5.5 8.5 12.0
65A 30 ~ 300 60 ~ 450 6.0 8.0 15.0
80A 40 ~ 400 120 ~ 600 6.0 8.0 22.0
100A 60 ~ 600 200 ~ 1000 6.0 8.5 30.0

※流量単位が kg/minの場合は kg/hに換算してから代入してください。
※上記表は一例であり、口径に対する製作可能流量範囲は流量計型式により異なります。
御使用になる流量計型式の最新版カタログ流量表をご覧ください。

3.仕様温度、仕様圧力、最大流量が決まっている場合(体積流量-オペレーション表示-1)

カタログ流量表は操業状態 20℃、1atm の想定でAIR流量m3/h(ntp)が記載されています。

流量計の流量単位が操業状態表示(オペレーション流量表示)では気体種類、圧力、温度によってAIRのm3/h(ntp)カタログ流量表に換算をして製作可否判断して口径を選定する必要があり、下記換算を行います。

客先仕様流量(ノルマル換算値) m3/h(ntp)
Qop 客先仕様流量(オペレーション) m3/h(op)
Q(AIR) 1atm、20℃へのAIR換算流量(カタログ) m3/h(ntp)
ρ 仕様流体の密度(ロー) kg/m3(ntp)
Pop 仕様流体の圧力 kPa(G)
Top 仕様流体の温度
温度0℃=273.2K K(絶対温度)
圧力 1atm=101.3 kPa(abs) kPa(abs)(絶対圧力)

例3.ヘリウムガス 密度0.1785 kg/m3(ntp)、圧力600 kPa(G)、温度80℃で最大流量300m3/h(op)の流量計の口径を選定します。
(圧力が MPa(G) の場合も kPa(G) に換算して数値代入してください。)
(1MPa(G)=1000 kPa(G)  0.1 MPa(G)=100 kPa(G) )

手順 ヘリウムのオペレーション流量m3/h(op)をヘリウムのノルマル流量m3/h(ntp)に換算します。(ボイル・シャルルの法則を用います。)

ヘリウムガスのノルマル流量 1606.5 m3/h(ntp)が求められました。
次にQ(AIR)流量に換算します。

AIR換算流量249m3/h(ntp)が求められました。
カタログ流量計表より最大 249 が適する口径を選定します。

4.仕様温度、仕様圧力、最大流量が決まっている場合(体積流量-オペレーション表示-2)

カタログ流量表は20℃、1atm操業での想定でAIR流量m3/h(ntp)が記載されています。

流量計の流量単位が操業状態表示(オペレーション流量表示)で仕様気体密度がオペレーション状態の密度では気体種類、圧力、温度によってAIRのm3/h(ntp)カタログ流量表に換算をして製作可否判断して口径を選定する必要があり、下記換算を行います。

客先仕様流量(ノルマル換算値) m3/h(ntp)
Qop 客先仕様流量(オペレーション) m3/h(op)
ρ 仕様流体のノルマル状態の密度(ロー) kg/m3(ntp)
ρop 仕様流体のオペレーション状態の密度 kg/m3(op)
Q(AIR) 1atm、20℃へのAIR換算流量(カタログ) m3/h(ntp)
Pop 仕様流体の圧力 kPa(G)
Top 仕様流体の温度
温度0℃=273.2 K K(絶対温度)
圧力1atm=101.3 kPa(G) kPa(G)(絶対圧力)

例4.アルゴンガス 密度4.629 kg/m3(op)、圧力200 kPa(G)、温度40℃で最大流量 500 m3/h(op)の流量計の口径を選定します。
(圧力が MPa(G) の場合も kPa(G) に換算して数値代入してください。)
(1MPa(G)=1000kPa(G)  0.1MPa(G)=100kPa(G) )

手順 アルゴンのオペレーション流量m3/h(op)をアルゴンのノルマル流量m3/h(ntp)に換算します。(ボイル・シャルルの法則を用います。)

アルゴンガスのノルマル流量 1297 m3/h(ntp)が求められました。
次にアルゴンガスのノルマル状態の密度を求めます。

アルゴンガスのノルマル状態の密度(1atm、0℃) 1.784 kg/m3(ntp)が求められました。
次に Q(AIR)流量に換算します。


AIR換算流量 913 m3/h(ntp)が求められました。
カタログ流量計表より最大 913 が適する口径を選定します。

上記計算の EXCEL FILEはこちら

5.仕様温度、仕様圧力、口径が決まっている場合

例5.AIR、温度20℃、圧力200 kPa(G)で口径40Aでは最大流量はいくらになるかの最大流量を計算します。

手順 上記流量表より40A「標準品」で1atmの場合は最大130m3/h(ntp)ですが圧力200 kPa(G)の仕様では 223.6 m3/h(ntp)が最大流量となります。

口径40AではAIR、温度20℃、使用圧力200 kPa(G)では最大流量220m3/h(ntp)が製作可能です。

ただし、最大流量値の選定は標準目盛分割の最大目盛をお使いください。

6.換算と補正

上の1.2.3.4.5.の「換算」を用いて流量計の口径、流量を選定しましたが「換算」とはこれから製作する流量計の仕様を計算することで概に購入し、ご使用されている流量計で仕様と異なる条件で流れている場合に実流量(真値)を求めることを「補正」と云います。
計算式はたいへん似ていますので混同しないでください。